マイクロソフトとクリプトンのキャラクター利用ライセンスの比較①

一つ前の記事では、両社のキャラクターライセンスの内容が非常に酷似していること、キャラ商売が本業ではないという両社の立場や、ルールを定めながらもユーザーへ配慮するという共通点について述べました。
では逆に、どこに違いがあるのか比較していきましょう。

■目的の違い
キャラクターライセンスを定める目的について、PCLでは「ピアプロ・キャラクター・ライセンスについて」の最初と、ライセンス文自体の前文が、Windows Azure キャラクターライセンス(以下WACL)では利用ガイドライン解説集に「はじめに」として、それぞれ記述されています。

●PCL
その目的として述べられているのは以下の部分です。

>クリエイターと権利者双方の願いと、現行著作権法とのギャップを埋めるために、
>クリプトン・フューチャー・メディア株式会社(以下、「当社」といいます。)は、ピア
>プロ・キャラクター・ライセンス(以下、「本ライセンス」といいます。)を制定します。


「クリエイターと権利者双方の願い」とはその前段で述べられているように、クリエイターの「二次創作物を公表したい」という思いと、権利者(ここではクリプトン社)の「非営利であればできる限り使ってもらいたい」という思いを指しています。
現行の著作権法は、そのまま字面通り適用してしまうとクリエイターのささやかな二次創作であっても権利侵害に当たります。
また、営利非営利の違いは加味されておらず、「利用」として一括りにされているため、権利者側にしても使ってもらって構わない範囲を定めて掲示する必要があり、中々踏み切れません。
辛うじて親告罪(告訴がなければ公訴を提起することができない犯罪)であるという点で権利者側の「無言の裁量」でバランスを取っている、というのが現状です。
その法と現実のギャップを埋め、二次創作者と権利者双方がルールを見られる形にし、そのルールの下で著作物を利用しようというのが、PCLの目的です。

●WACL
一方マイクロソフトは、キャラクターライセンス自体には特に目的について書かれていませんが、利用ガイドライン解説の「はじめに」でこのように述べています。

>マイクロソフト (以下、「マイクロソフト」または「当社」) は、当社が提供しているクラ
>ウドオペレーティング システム (OS)「Windows® Azure™」をより多くのユーザー
>に知っていただき、活用いただけるよう「クラウディア窓辺 (まどべ)」および「クロード窓
>辺 ;(まどべ)」 (以下、「本キャラクター」) を「Windows Azure 公認キャラクター」と
>して制定いたしました。


これは正確には「キャラクターを作り、公認した目的」ですが、二次創作におけるキャラクターライセンスを定めた事もその延長であると考えれば、マイクロソフトのクラウドサービスである「Windows Azure」の「広報と活用の促進」が目的であると言えます。
クリプトンが掲げた目的と比べるとややビジネス寄りな印象を受けますが、二次創作が拡大することで広報と同時に自社製品の販売に繋がるという点は、クリプトンも同様です。
クラウディア自体がWindows Azureという製品を広報するためのキャラなわけですから、マイクロソフトが広報を目的として利用ライセンスを定めるのは至極当然でしょう。
クリプトンボカロも製品パッケージそのもののキャラクターであることを考えれば、より直接的な製品広報であると言えなくもありません。

実際のところは、もっといろんな思惑が絡んでいるとは思いますが、掲げられた目的はこのように少々異なります。
ただ、その目的のために取るべき手法には共通する点が多かったことが、類似した(マイクロソフトがPCLを参考にした)理由でしょう。

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